2006年11月20日

Blepharopsis mendica


分布:アフガニスタン、イランなどの中東からエジプト、スーダンなどのアフリカにかけて広く分布
和名:アザミカマキリ
英名:devil's flower mantis , thistle mantis

 雌雄ともに体長6〜7cmの中型種で、ヨウカイカマキリ科(Empusidae)に属する。古くからヨーロッパを中心に累代されており、ほぼ普通種として流通しているが、野外品の入荷は全くと言ってよいほど無いようである。過去にも日本への輸入歴はあるようだが、入荷と言うよりはマニアが個人的に楽しむために輸入する程度の数で、国内市場にはほとんど出回ることはなかったようである。2006年に私がニセハナマオウカマキリを輸入する際に、ごく少数だけ本種をおまけで輸入したが、後にショップがヨーロッパから輸入し、まとまった数が国内の飼育者に広まった。海外では多くのマニアが維持しており、本来入手が困難な種ではないので、今後も入荷が続くと思われる。

 本種はヨウカイカマキリ科の種であるが、性質はヒメカマキリ科のアフリカメダマカマキリPseudocreobotra wahlbergiiによく似ている。すなわち、活発に歩き回るのではなく一ヶ所に留まることが多く、高い捕食活性を示す。体長を超える大きさのエサにも躊躇なく襲い掛かることから、大変アグレッシブな種であることがうかがえる。私は少数しか飼っていなかったので個別飼育していたが、多頭飼育するのであれば十分なエサを常に与え続けることが必須であると思われる。また、本種は乾燥地域に産するので、個体・ケージともに加水はほぼ必要ない。40%程度の湿度でも難なく脱皮をこなし、不全も確認できなかった。逆に、高湿度は避けるべきであろう。また、飼育温度については30℃位の高温が要求されるようであり、高温耐性も強い。私に本種を送ってくれたマニアによると、45℃の飼育温度でも問題ないそうだ(確認はしていないが…)。ただ、本種の要求する高い飼育温度はあくまで乾燥条件であり、蒸れには他種同様弱いと思われる。

 羽化直後の成虫はベージュを基調とした体色であるが、ニセハナマオウカマキリの新成虫がそうであるように、数日をかけて徐々に緑色と白色の美しいマーブル模様に変化する。私の確認したところでは、オス成虫は羽化後2週間未満であればメスに興味を示さず、交尾は成立しなかった。2週間以降で初めて交尾が成立する。本種はそのアグレッシブな性質を考慮すると、雌雄の共食いが起こる可能性が他のヨウカイカマキリ科の種よりも高いと思われる。よって、できれば雌雄同居による『カマキリ任せ』のペアリングは避け、飼育者の管理の下で交尾を行わせたい。

 手元の本種は、唯一のメスが死んだことにより累代がかなわなかった。再び個人的に輸入することも十分可能ではあるが、今は他に累代成功を優先すべき種がある。本種の飼育は、またいつか機会があれば行う…かも。

<写真>
終令幼虫(微毛に覆われている)
オス成虫の頭部
卵嚢






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