2006年03月01日

Acromantis sp.


分布:タイ(その他は不明) 属としては東南アジアから東アジアに広く分布
和名:ヒメカマキリ?
英名:なし

 本種はタイ産のカマキリであるが、一見日本産のヒメカマキリ(Acromantis japonica)と区別がつかない。体長は雌雄共に2.8cm程度であり、日本産のヒメカマキリよりも若干(2mm程)小さめである。日本産との区別のポイントを以下に挙げる。日本産ヒメカマキリのオスの後翅端がラウンド状であるのに対し、本種の後翅端は直線的である。また、本種は雌雄共に中肢・後肢腿節にヒレ状の小さな突起があるが、日本産には痕跡程度にしかない。…まだしっかり観察していないので、じっくり見れば相違点は他にも見つかりそうだが…どちらにしろ違いは微妙である。
 私は過去にマレー産のもので、本種と大変よく似た種を見たことがある。本属は21種を擁しており、ホロタイプでも見ないと同定は困難である。産地から判断するに、本種は多分A. grandisだと思うが…同定に自信はない。現在ブリード中につき、まだ次世代はとれていないので幼虫飼育に際してのコツは不明である。日本産ヒメカマキリと同様にかなり俊敏で、成虫はカマキリとは思えない驚異的なまでの飛翔活性がある。飼育の際は、脱走にくれぐれも注意したい(ちなみに私は既に2度、大脱走された。意地で回収したが。)。

 飼育に際しては、平均的なセット(当方では、ケージに人工の枝葉を設置し、湿度は底に置いた濡れティッシュで補給している。湿度は、ティッシュが乾いたのに気付いたら補給する…という程度)を用意すればよい。20卵程度が含まれる卵嚢は、1ヶ月程度で孵化する。1令幼虫は小さく、エサには本来キイロショウジョウバエが相応しい。トリニドショウジョウバエの捕獲には苦労するが、これをエサとするのも不可能ではない(私はトリニドを与えた)。4令程度まではショウジョウバエのみ与えていても十分に育つ。5令以降の幼虫は、体の大きさを考えるとキンバエなどのハエ類を与えるのが良い。コオロギの幼虫(1cm程度)は腹持ちが良いので、本種中令幼虫にこれを1頭与えればしばらくエサやりなしでも良いが、コオロギの『反撃』には十分に注意したい。幼虫のエサや飼育法は、この後成虫まで同じでよい。また、本種は共食い傾向が高くはないので、大きさが同程度の個体同士なら多頭飼育も問題なく行える。ただし、本種もカマキリであるので、極端な飢餓、個体同士の著しい体格差が生じると共食いが送り得るので、注意したい。
本種は孵化後2ヶ月という短期間で成虫にまで育つ。性成熟したオスは、メスを確認すると躊躇も遠慮もなく飛びかかり、交尾に至る。よってペアリングは大変容易であり、何のトラブルも発生しない。

 余談であるが、本種は日本産ヒメカマキリよりも昔写真で見たサツマヒメカマキリ(A. satsumensis)に似ている気がする。サツマヒメカマキリの学名はこれだと思うのだが、ネットでサツマヒメカマキリを調べると、どのサイトでも充てられている学名はA. australisばかり…A. australisはパプアニューギニアなどに分布する種なのだが、これは誰かがネットで間違って記述したものを他者が皆真似たために広がった間違いなのか、それとも昔はサツマヒメカマキリはA. australisのシノニム扱いだったのが最近独立種と認定されA. satsumensisという学名がついたばかりなのか…私には真相はわからない。

<写真>
擬死
交尾
後肢腿節の比較(左:タイ産、右:日本産)
後翅端の比較(左:タイ産、右:日本産)





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