交尾を「させる」

 カマキリは交尾の際に雌雄が共食いすることがありますので、雌雄を1つのケージに入れて交尾するのを待つより、飼育者がコントロールして交尾「させる」方がリスクが少ないです。ここでは、交尾「させる」のが最も簡単なランカマキリを例に、その方法を紹介したいと思います。

1.交尾させたい日の前日にオスを単独で広いケージ(特大プラケースなど)に入れておきます。枝や葉っぱなど、下手な構造物は入れない方が無難です。オスを入れたケージは蓋の開閉などの刺激を与えずに安置します。この日、念には念を入れるのであればメスにエサを与え、太らせておいてもよいでしょう。ただし、あまりメスの腹部をパンパンにさせ過ぎると、交尾の為にオスが飛び乗る際に誤ってオスの鎌が当たってメスの腹部説間膜を傷つけてしまい、メスがケガをしてしまうことがあります(私も2回経験があります)。よって、メスへの給餌は腹部節間膜に余裕が残る程度に留めましょう。

2.次の日、オスはケージの蓋に落ち着いていることが多いです。この場合、そっとケージを蓋を外してひっくり返し、安定する場所に置きます。ケージの壁に落ち着いている場合は、蓋を外してオスの落ち着いている面の壁を下にして(オスが直立するようにする)安置します。枝などに落ち着いている場合も同様です。

3.メスを用意し、オスの正面の10cm以上離れた位置をゆっくり歩かせます。この時、メスは思うようにオスの前を横切ってはくれないので、長い(30cm程)ピンセットや細い枝でメスの腹端をつついて歩かせます(ピンセットや枝は、雌雄共に気付かれないようにする)。また、メスに対して一定のリズムで軽く息を吹きかけることで、メスに触れずに歩かせることもできます。ちなみに、今回の例ではそっと息を吹きかけてメスを歩かせています。メスがオスの方に向かって歩いていってしまったときだけピンセットを用いました。とにかく、メスがオスの前を横切るというのが重要で、オスが逃げてしまいますので決してメスがオスの方に歩いていかないようにします(写真1)。

4.メスが目の前を横切ると、オスはメスに気付き目で追います(写真2)。そしておもむろに歩き出し(写真3)、そっとメスに歩み寄ります(写真4)(オスはメスが歩いているときだけ動き、メスが歩くのを止めると同じように歩みを止めてしまいます)。

5.オスはメスより早く歩くことで距離を縮め(写真5)、やがて追い付くと飛び乗って交尾に入ります(写真6)。こうなると成功ですので、あとはオスを入れていた広いケージにペアを入れておきます。広いケージに入れておくことで、交尾後オスが離れた後に共食いが起こる可能性を低くすることができます。また、交尾が始まったらメスに「もう食えない」というくらいまでエサを与えても大丈夫です。こうしておけば、メスはオスを食べません。私は希少な種にはここまで徹底することで、交尾の際の共食い率を限りなくゼロに近くしています。交尾は通常半日程度で終わりますので(短ければ数十分)、オスがメスから離れているのを確認したら雌雄を隔離して下さい。ランカマキリだけは例外で、交尾後もオスがメスの背中に何日も留まっています。メイトガードの行動ですが、飼育下では必要ありませんし、その状態だとオスが飲まず食わずで消耗してしまいますので、交尾器接合が解除されたらオスを引き離しても構いません。



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