交尾適期がわからない!

 飼育している生物が雌雄揃ったら、繁殖させたくなるのが人情というものでしょう。当たり前のことですが、カマキリが不完全変態の昆虫であると言っても幼虫の時には交尾しませんし、成虫になっていたとしても、性成熟していない段階だと交尾は成功しません。交尾適期というものがあるのです。交尾適期がわからない場合、雌雄の成虫を1つのケージでずっと飼育しておけば、彼らは勝手に交尾してくれます。でも私はそんなことしません。多くの飼育者の方も共食いは嫌でしょうし、できればリスキーな雌雄同居は避けたいでしょう。雌雄を同居させない場合、飼育者が交尾適期を見極めて交尾させる必要があります。交尾させる方法は別項に記すことにして、ここではまず交尾適期(性成熟の時期)を見極める方法をお教えします。

 まずメスについてですが、私は通常羽化後1〜2週間経過した個体は交尾させています。要は、羽化後外殻が固まってエサを捕るようになってしばらく経ってから…という感じです。アバウトですか?確かにこの場合メスの性成熟を確認しているワケではありませんね。でも経験上、この位の時期であれば交尾可能で有精卵生産を普通に行うことができることがわかっていますし、色んな種で試したところ問題ありませんでした。逆に、羽化後3〜4週間以上経過すると、メスは未交尾でも我慢できずに産卵(この場合は無精卵)してしまいます。メスが生涯に生産できる卵数はある程度限られていますので、できるだけこの『空産み』は避けたいところです。よって、メスは羽化後2週間経ったらできるだけ早く交尾させたほうがよいでしょう。
 また、メスの性成熟を視覚的に確認する方法もあります。カマキリのメスが交尾に先立ってオスを誘引する性フェロモンを分泌している(と言われている)のはご存知ですか?カマキリは通常、交尾の際にはオスが視覚でメスを捉えることが刺激になっていますが、それ以前にメスが近くにいるということを知るためにはフェロモンを用いているようです。この「メスがフェロモンを分泌している行動」は我々の目にも明らかで、これを指標にメスの性成熟を知ることができるのです。以下に写真で紹介します。
 通常時、メスの腹部は写真1のようになっていますが、コーリング(フェロモンを分泌)しているときは写真2のように腹部を腹板側に引き付けるような姿勢をとります。このとき、矢印の部分(腹部背板の節間膜にあると思われる腺)からフェロモンを分泌しているようです。この行動を行うメスは十分に性成熟しており、いつでも交尾可能です。また、この行動は通常、未交尾のメスのみに見られる行動です。交尾をさせたにも関わらずメスがこの行動をとる場合には、受精していないか体内(受精嚢内)の精子が不足している可能性が示唆されますので、念のため再度交尾させたほうがよいでしょう。
 コーリングは、夜間、しかも消灯して真っ暗になったときにしか見られません。また、コーリングしているときにケージに触れるなどしてメスを刺激すると、あっさり止めてしまいます。この行動を確認したいときにはそっと観察して下さい。

※コーリング行動は外国産カマキリだけでなく、国産種にも見られる行動です。国産種を飼育されている方も参考になさって下さい。

 オスはメスのようにコーリングすることもありませんし、性成熟を目で確認することは不可能でしょう。オスは羽化後1週間経てば交尾可能ですし、受精能力も備わします。これを目安にオスを交尾に臨ませてみて下さい。もしメスに全く興味を示さないようであれば、その日は諦めて次の日にチャレンジしてみて下さい。



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