嘔吐
 飼育するなかで、特に霧吹きによる給水を行っていると、一部嘔吐する個体が出てきます。嘔吐の様子を観察すると、口を前に突き出し、嘔吐したものを地面に垂らしたり口を壁や地面になすりつけて嘔吐物を塗る(と言うよりは口から拭い去る)行動が確認できます。嘔吐の原因はよく解りませんが、私は細菌やカビなどの感染あるいは摂り過ぎた水分の単なる吐き出し行動であると考えています。細菌やカビなどの感染という可能性については別項(『飼育法』の《温度・水》の項)で述べていますが、もしこれが原因であるならば水を飲む際に経口で感染してしまうのでしょう。何が原因にしろ、1度や2度の嘔吐で済めばよいですが、これが癖になってしまうことがあります。これが厄介で、嘔吐癖がついた個体は、満腹状態までエサを食わせていても結果的にそれを全部吐き出してしまい、餓死してしまうことがあるのです。
 
 嘔吐が癖になってしまった個体を回復させるのに1番大事なのは、根気です(いや、大真面目ですよ)。嘔吐癖自体を飼育者が失くさせるのは不可能ですので、餓死を防ぐためにエサを多めに与えるのです。その際、嘔吐癖がついてしまった個体は自分でエサを摂らないこともよくあるので、『拒食』の項にある給餌法でエサを満腹になるまで与えてください。しかし、せっかくエサを与えても嘔吐癖のある個体は数日中に腹部がペタンコになるまで嘔吐してしまうでしょう。そうならないために、2日に1度程度満腹になるまで給餌し、空腹になるのを防いでください。もう1つ大切なことですが、この間、霧吹きでケージに給水するのは止めて下さい。エサを食っては吐き出し、吐き出してはエサを食い…というイタチゴッコを続けるうちに、個体が徐々に嘔吐しなくなることがあります。また、この間に脱皮をすればラッキーです。なぜか解りませんが、脱皮を経ると嘔吐癖がなくなってしまう個体が多いです。余談ですが、同じく脱皮を経ると拒食癖もなくなることが多いです。

 嘔吐による死亡の原因は、消化管内容物がなくなってしまうことによる飢餓です。嘔吐癖がついた個体は、他の個体よりも少し過保護にして、飢餓状態に陥ってしまわないように根気よく世話してあげましょう。
 


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