※同定不能。Theopompa burmeisteri かT. servilleiのどちらかである。
分布:T. burmeisteri…ジャワ、スラウェシ T. servillei…ジャワ、マレー半島など
和名:キノカワカマキリ
英名:bark mantis
雌雄とも体長は4.5cm程度。体色はその名の通り樹皮に似た色で、mimesis(隠蔽的擬態)の効果があると思われる。2004年以降、急に国内に入ってくるようになった。もう1種と一くくりで『キノカワカマキリ』と称し販売されているので、種名は不明である(おそらく上記2種のいずれかであると思われる)。ちなみに、写真はジャワ産。カマキリとしては珍しく、動きが大変素早い種である。驚くとツマグロヨコバイのように素早い動きで横歩きし、樹皮の裏側に隠れる行動が興味深い。また、エサを確認するとエサが近づくのを待つのではなく、自ら駆け寄って捕食するアグレッシブさがある。天井にぶら下がるよりも壁に張り付く形で静止するのが好きなようなので、飼育の際にはケージ内にコルクバーグを立てかけるなどすればよいだろう。メスはチョウセンカマキリのそれに似た(卵嚢の幅は、より広い)卵嚢を生産し、内部には50程度の卵が含まれる。本種は他の種と違い、孵化した幼虫を高密度で多頭飼育するのはお勧めしない。というのは、本種は個体同士の接触に驚いてケージ内を走り回ってしまう癖はあるので、高密度で飼育するといつまで経っても落ち着いてエサを食えず、餓死してしまう傾向があるからだ。私もこの失敗により、多くの幼虫を失ってしまった経験がある。共食い率は中程度であり、頻繁にでなないが雌雄間でも意外と共食いが起こる。飼育には高めの湿度が必要であり、乾燥気味になると高い確率で脱皮不全が起こる。しかし、あくまでもケージ内の『蒸れ』は厳禁である。
本種は、産卵後1ヶ月程度で1つの卵嚢から50頭以上の幼虫が孵化する。以前は多頭飼育が困難であると思っていたが、ツボさえ押さえれば1卵嚢分の幼虫数十頭を1つのケージで多頭飼育することも何ら難しくない。と言うのは、本種は走り回るのが通常の生活スタイルであるので、多数の幼虫が走り回れる構造物をケージ内に入れてやればよいのである。よって、私自身が他種の飼育においてケージ内に導入しているような枝葉は、本種の飼育にはあまり適さないと言える。本種の1令幼虫は問題なくトリニドショウジョウバエを捕食できるので、これを主食とする。そのまま5令程度まではショウジョウバエのみを与えて飼うことができる。1令から成虫に至るまで、本種は『待ち伏せ型』の捕食ではなく、エサを見つける素早く駆け寄って捕食するという行動が確認できる。5令以降はコオロギの幼虫がエサとして適しているが、構造物の多い本種のケージ内に無造作にコオロギを放り込むと、生き残ったコオロギがケージに住み着いてしまう、脱皮中のカマキリを襲ってしまうので十分に注意したい。この危険性を考慮すると、ハエを与える方がいいのかも知れない。本種は幼虫期間はほぼ共食いしない。しかし、成虫になると稀にメスがオスがメスを食うことがあるので、常にエサを十分量与えておいた方がよい。
本種のペアリングについては、全くと言って良いほど交尾『させる』ことができない種であると認識している(例外として、飼育下で生まれ育った神経質でない個体ならば交尾『させる』ことも可能)。私の使う交尾法は、オスの前でメスを歩かせて交尾に至らせるというもの(参照)だが、少しでも刺激すると猛然と走り去ってしまう本種にその方法は不適である。また、メスの背にオスを乗せる…というペアリング法(昔はよく行っていたが、少々問題があるので今は使っていない)も試してみたが、本種ではさっぱりうまくいかなかった。よって本種については、少々不本意であるが雌雄同居による『カマキリまかせ』のペアリング法が最適だと言わざるを得ない。しかしこれについては前述の通り、空腹のメス成虫はオスを捕食してしまうことがあるので、交尾ケージ内のメスには十分なエサを与えておく必要がある。条件が整えば、オスはAcromantis sp.のオスのように積極的にアプローチする。
<写真>
標本
成虫(左:オス、右:メス)
樹皮に紛れる
交尾
1令幼虫
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