2006年11月22日

ケニアとタンザニア


 今回はニセハナマオウカマキリの産地の話を…。

 日本のショップが仕入れる本種野外品の産地はケニアと記載されているが、これはほぼ違いないとのことである。正確には、ケニア南部(詳細な地名は、現地の採り子が教えてくれないそうだ。彼らにとって産地の情報は貴重な財産なので、秘匿するのは理解できる。)とのことだ。
 一方、海外のマニアの話によると、ヨーロッパで出回っている本種のブリード品は、元々タンザニアのシッパーから卵嚢を購入して、その子孫を殖やしたものであるとのこと。産地として挙げられている地名はここでは伏せるが、タンザニア北部で、ケニアとタンザニアの国境から約100kmしか離れていない土地だ。ヨーロッパに出荷しているシッパーが本当に本種をタンザニアで採集しているのか、あるいはケニアに入国して採集し、それをタンザニアからヨーロッパに送っているのかは定かではない。そのあたりをタンザニア人のシッパーに直接問い合わせてみたこともあるが、正確な答えは返ってこなかった(国民性なのか、かなりテキトー…)。どちらにしても、『タンザニア産』と言っても、ケニア産の個体群と数百kmしか離れていないごく近い地域、あるいは同じ地域で採集されたもののようだ。
 
 私が何を言いたいのかというと、「ケニアとタンザニアのマオウと言えば別物に思えてくるかも知れないが、少なくとも現在出回っている本種の産地はせいぜい数百km以内の範囲にある(あるいは、実は採集地は同じ…という可能性も十分にある)。間には人間が便宜的に設けた国境があるだけで、生物種の個体群を隔絶する要因(山脈、海、湖沼、大河、人間の大規模な経済活動など)はないので、2つの産地のマオウに何ら差異はないであろう。」ということである。例えるならば、本州において東京のオオカマキリと大阪のオオカマキリを比較するようなものである。両者のオオカマキリ個体群は遺伝的に「あかの他人」であることは十分に考えられるが、ご存知の通り別種でも別亜種でもない。
 
 別種・別亜種でなくても、違う場所同士由来の個体同士を交配することを嫌う方が確かにいるということは理解できる。それは個人の自由だと思うし、私自身も基本的にはそういう考えだ。しかしニセハナマオウのように2つの産地が0〜数百km以内の範囲にあり、両産地に地理的隔離も無い場合は、必ずしも分けてブリードする必要はないように思う。
※マレー産とジャワ産のランカマキリのように、差異が明確な場合はこの限りではない。
 
 今、私の手元にはケニア産・タンザニア産としてそれぞれ入手したニセハナマオウカマキリがいる。私は今のところ、2つの産地、あるいはそれ由来の個体に違いがあるとは思えないので、両者を完全に分けてペアリングするつもりはない。写真の個体はケニア産の終令メスであるが、当方で次に成虫となるメスはおそらくこの個体である。手元に届いた時は左後肢を脛節から失ったB品の亜終令であったが、脱皮により符節まで再生し、元気に育ってくれた。この個体が羽化すれば、おそらくタンザニア産として育ったオスと交尾させることになるであろう。手元にケニア産オス成虫がタイミングよくあればそちらとの交配をさせてもよいが、ケニア産オスの羽化はまだ先の話になりそうなのだ。

 別に、私の考えをゴリ押ししようというつもりはない。ただ私は、本種については産地区別の有意性を感じないので、産地を気にせずにブリードすると思う。

  





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