分布:タイ、インドネシアなどの東南アジアからインド、スリランカなどの南アジアにかけて広く分布
和名:
英名:wonderling violin mantis , Indian rose mantis
体色は明〜暗褐色、灰色で、稀に緑色を呈する。体長は雌雄とも8〜9cm程度と大型であり、見応えがある。本種はヨウカイカマキリ科(Empusidae)に属し、古くからヨーロッパを中心にブリードされてきた種である。しかし国内はもちろん、近年はヨーロッパでも野外品の入荷は全く無いようで、市場に出回っているのは全てが累代によって維持されているブリード物である。インドのカマキリというイメージが強いようであるが、その分布域は広い。おそらく、最初にヨーロッパに入荷した個体群がインド産であったことから、インドのカマキリと位置付けられるようになったのだと思われる。日本国内への入荷は過去にはあったようだが、マニアによる個人輸入が主で、飼育人口は皆無であった。私自身は2006年に本種を個人輸入したが、後にショップによる別ルート(国)の輸入もあり、現在日本国内では複数の系統が飼育されていることになる。両者の輸入ルートは異なるが、ルーツまでもが異なるかどうかについては疑問が残る。
本種の性質は大変穏やかで、多頭飼育も容易にできる。しかし飢餓状態になれば稀に共食いが起こる(確認済み)ので、少数のみを飼育している場合には安全な個別飼育を行う方が無難かも知れない。十分な飼育条件下で維持した場合、本種の成長は大変スムーズで、大型種にも関わらず3令程度の幼虫がわずか2ヶ月で成虫にまで育つ。メス成虫はやや短翅であり、飛ぶことはできない。普段は飾りにしかならない翅であるが、威嚇の際には後肢腿節と前翅前縁を擦り合わせ、「ギーギー」という威嚇音を発する役割を果たす。一方、オスは長く立派な翅を持ち、活発に飛翔する。また、オス成虫の触角は鱗翅目昆虫のようなクシ状の構造をしている(ヨウカイカマキリ科の中で最も発達したクシ構造)。野外では、この触角でメスが放つ性フェロモンを吸着し、これを手がかりにメスを探すものと推察される。
海外のサイトや文献を参照すると、本種の飼育適温は30℃以上(時に40℃に至る)と記載されていることが多いが、当方では24〜30℃(主に約25℃)という温度帯で問題なく成長・交尾・産卵に至っている(高温・乾燥のインドだけでなく、東南アジアにも分布するので当然と言えば当然か…)。このことから、本種の飼育には必ずしも極端な高温が必要なのではなく、一般的な熱帯産カマキリの飼育セットで十分飼育可能であると言えよう。ただ、25℃前後でも飼育が可能なだけで、真に適した温度は30℃以上である可能性も十分にある。これについては、今後も飼育を継続して検討したい。
<写真>
緑色個体
オス成虫の頭部
交尾
卵嚢
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